開講科目名 | 会計学特論I | 大学院 | ||
---|---|---|---|---|
担当教員名 | 川本 和則 | 開講期 | 単位数 | |
前期 | 2単位 |
大学院商学研究科会計分野に係る専門科目として、本学大学院の教育理念である「社会科学の各専攻分野に関する高度の専門的知識と、具体的社会事象に関する問題分析能力、理論的予測能力、創造的な政策立案・実践能力を備えた人材の養成」の達成に貢献することを講義目標とする。
本講義の到達目標は、会計基準の正当性を支えることに関して下記の組織などが果たす役割について、受講者が概説できるようになることである。
1.会計基準設定機関が果たす役割について概説できる。
2. 概念フレームワークが果たす役割について概説できる。
【講義方法】
この講義は、対面形式でのみ行う。
大学全体でオンライン講義を行う場合の授業方法:YouTubeやZOOMなどによって行う。講義日の前日までに具体的な講義方法に関する指示を講義掲示板から送信する。毎回、決められた提出期限までにレポートを提出することが必要である。
【講義計画】
<本講義を受講する際の注意>
本講義では大学レベルの会計学の知識、および日本商工会議所主催簿記検定試験2級程度の簿記の知識が必須であるので、注意すること。基礎的な簿記の知識をまだ学修していない場合は、上記の会計学と簿記の学習をしたうえで本講義を履修することが望ましい。
<授業計画>
本講義は受講生が幅広い視野に立って、会計基準のコンバージェンスと将来事象会計(非常に多様な将来予測要素を内包する会計処理)の導入が進展する現代会計を理解する能力を養成するために、わが国の会計基準および会計実務の正当性がいかにして支えられているのかを国際財務報告基準(IFRS)の内容等にも触れつつ講義する。さらに、そのことを通じて、受講生が会計現象を独自の視点で論理的に把握し、修士論文の作成に必要な研究を自立的に進展させうる研究能力の育成も目指す。
本講義では毎回、講義内容に関する予習を課す。講義においては受講生に質問したり各自の考えを論理的に説明するための時間をとる。また、必要に応じて、受講生同士が議論する時間を設けることもある。
(1)会計基準形成における合意の獲得方式(第1回から第6回)
会計を理解するためには、ある会計処理を用いることの正当性がいかにして支えられているのかという側面からの検討も重要である。この会計処理の正当性に関する問題を検討するために、わが国の会計基準設定機関を中心に、会計基準の形成方式と会計処理に対する合意の獲得方式との関係について6回の講義を行う。
なお、合意の獲得方式を検討するために取り扱う問題等は、受講生の関心および会計学の基礎能力の習熟度に応じて変更する予定である。変更した場合の予習内容等については、講義中に改めて指示する。
第1回 会計の役割(会計実務と合意の獲得)
・事前学修:会計実務、会計処理、会計基準(会計原則)、会計理論の役割について調べる。
・事後学修:会計実務に対する合意の獲得の重要性について整理する。
参考資料:加藤盛弘『現代の会計学』第3版、森山書店、2002年。
第2回 わが国における会計基準の形成方式
・事前学修:財務会計基準機構の構造(各組織の内容と役割)と企業会計基準委員会の会計基準形成方法について調べる。
・事後学修:企業会計基準委員会の会計基準形成方法の特徴を整理する。
・参考資料
企業会計基準委員会「企業会計基準委員会等運営規則」
企業会計基準委員会「会計基準等の開発・公表の手続きについて」
財務会計基準機構「公益財団法人 財務会計基準機構 定款」
第3回 わが国会計制度のあり方
・事前学修:金融商品取引法、会社法、および法人税法における会計基準の位置づけについて調べる。
・事後学修:わが国会計制度における会計基準の位置付けについて整理する。
・参考資料
会社法、金融商品取引法、法人税法、および関連する諸法令
第4回 国際財務報告基準の形成方式
・事前学修:IFRS財団の構造(各組織の内容と役割)とIASBのデュー・プロセスについて調べる。
・事後学修:IASBの会計基準形成方法の特徴を整理する。
・参考資料
加藤盛弘『一般に認められた会計原則』、森山書店、1994年。
佐藤誠二編著『グローバル社会の会計学』、森山書店、2009年。
IFRS財団『デュー・プロセス・ハンドブック』、2016年
(IFRS Foundation, Due Process Handbook, 2016)。
IFRS財団『定款』、2018年(IFRS Foundation, Constitution, 2018)。
第5回 会計基準のコンバージェンス
・事前学修:ノーウォーク合意と東京合意、およびわが国におけるIFRSへの対応について調べる。
・事後学修:わが国におけるIFRSへの対応について整理する。
・参考資料
佐藤誠二編著『グローバル社会の会計学』、森山書店、2009年。
企業会計審議会「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」2009年。
企業会計審議会「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」、2013年。
第6回 会計基準設定機関と合意の獲得
・事前学修:会計基準設定機関の構造とそのデュー・プロセスの存在などが会計基準の正当性に関して果たす役割について考える。
・事後学修:講義内容を参考に、事前学修で考えた自らの意見を再検討する。
・参考資料
加藤盛弘『一般に認められた会計原則』、森山書店、1994年。
佐藤誠二編著『グローバル社会の会計学』、森山書店、2009年。
(2)合意の獲得と概念フレームワーク(第7回から第15回)
わが国およびIASBの会計基準の正当性は会計理論によっても支えられている。ここではその会計基準の理論的正当性について検討するために、IASBの概念フレームワークにも触れながら、わが国の討議資料「財務会計の概念フレームワーク」の内容とそれが果たす役割について9回の講義を行う。
なお、第7回から第13回の資料と参考資料は下記のとおりである。
資料:企業会計基準委員会、討議資料「財務会計の概念フレームワーク」、2006年。
参考資料:国際会計基準審議会「財務報告に関するフレームワーク」、2018年
(IASB, Conceptual Framework for Financial Reporting, 2018)。
第7回 財務諸表の目的論と合意の獲得
・事前学修:財務報告の目的について調べる。
・事後学修:財務報告の目的に対する自らの意見を整理する。
第8回 財務諸表の質的特性論と合意の獲得
・事前学修:会計情報の質的特性について調べる。
・事後学修:会計情報の質的特性に対する自らの意見を整理する。
第9回 財務諸表構成要素の定義論と合意の獲得(1)(資産、負債および純資産の定義)
・事前学修:資産、負債および純資産の定義について調べる。
・事後学修:資産、負債および純資産の定義に対する自らの意見を整理する。
第10回 財務諸表構成要素の定義論と合意の獲得(2)(収益および費用の定義)
・事前学修:収益および費用の定義について調べる。
・事後学修:収益および費用の定義に対する自らの意見を整理する。
第11回 財務諸表構成要素の認識論と合意の獲得
・事前学修:認識規準について調べる。
・事後学修:認識規準に対する自らの意見を整理する。
第12回 財務諸表構成要素の測定論と合意の獲得(1)(資産の測定)
・事前学修:資産の測定について調べる。
・事後学修:資産の測定に対する自らの意見を整理する。
第13回 財務諸表構成要素の測定論と合意の獲得(2)(負債の測定)
・事前学修:負債の測定について調べる。
・事後学修:負債の測定に対する自らの意見を整理する。
第14回 概念フレームワークが果たす役割
・事前学修:わが国における概念フレームワークの位置づけについて調べる。
・事後学修:概念フレームワークの位置付けに対する自らの意見を整理する。
・参考資料
加藤盛弘『現代の会計原則』[改訂増補版]、森山書店、1987年。
第15回 会計基準の正当性と合意の獲得
・事前学修:合意の獲得と会計基準の正当性との関係について調べる。
・事後学修:合意の獲得と会計基準の正当性との関係に対する自らの意見を整理する。
・参考資料
加藤盛弘『一般に認められた会計原則』、森山書店、1994年。
加藤盛弘『現代の会計学』第3版、森山書店、2002年。
予習(2時間)
上記の授業計画を参考にして、次回の講義で学修する資料の該当部分を読み、予習した内容に関する自らの考えを整理する。また、講義での報告を課した場合には、その準備をしてくること。
復習(2時間)
毎回の講義で学修した範囲の会計基準等を読み返し、自分なりに整理できるようにする。復習時に生じた疑問点や理解しにくい点は、オフィスアワーや次回の講義の際に質問するなどすること。
会計学特論II
会計実務論特論I、会計実務論特論II
財務会計論特論I、財務会計論特論II
現代会計論特論
国際会計論特論I
管理会計論特論I、管理会計論特論II
成績評価は毎回の受講態度(報告や議論への参加などを含む)およびレポートによって評価する。報告は講義中にコメントし、レポートは後日、コメント等をつけて返却する。
本講義では大学レベルの会計学の知識、および日本商工会議所主催簿記検定試験2級程度の簿記の知識が必須であるので、注意すること。基礎的な簿記の知識をまだ学修していない場合は、上記の会計学と簿記の学習をしたうえで本講義を履修することが望ましい。
著者:中央経済社編 書名:新版会計法規集<第11版> 出版社:中央経済社
適宜指示する