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開講科目名 商法特殊講義II 大学院
担当教員名 西尾 幸夫 開講期 単位数
前期 2単位
シラバス1

【授業目標】

本演習は、会社法上の主要な論点を概観するとともに、株主総会の運営および支配権争奪に係わる問題および2015年5月1日施行の改正会社法及び現在進行中の会社法改正内容を検討することにする。その際には、これまでの判例・決定事例、ガイドラインおよびアメリカ・EUとを中心とする外国法制との比較を視野に入れるようにする。

【到達目標】

会社法に関する現在的な課題・問題点を議論することを通して、会社法と企業社会との接点を探り、あるべき会社(公開会社法等)を検討できるようになること。
第一に、株主総会の招集・開催を中心として取締役会の招集決議、招集通知、議決権代理行使、総会招集、提案権・質問権行使、議決権代理行使の委任状、議長の権限、書面投票、総会決議の瑕疵、決議取消の訴えと裁量棄却・訴えの利益について、
第二に、募集株式の発行、新株予約権の発行および種類株式の発行(MBOを含む)に係わる支配権の希釈化・会社支配の争奪に関する問題、
第三に、会社法改正に関係する(第三者新株発行、株式併合のほかに)独立役員、監査役制度(監査役の権限強化、従業員の経営参加を含む)、親子会社規制(多重代表訴訟を含む)について、上場会社等の大規模会社と中小規模の会社における違い等をも念頭に置きながら、その意義と問題点を理解できるようになることである。
第四に、現在進行中の会社法改正作業での検討項目(招集手続きの電子化、提案権行使のあり方、報酬規制の検討等)も取り上げ、グローバル化のなかれの中で会社法改正の傾向や実態を理解できるようにすることである。

【授業計画】

授業形態:演習、授業方法:基本的には受動型であるが、後半部分は問題解決型を部分的に取り入れる。

1.会社の設立
設立手続と基本的な概念を整理した上で、出資の履行を確実なものとするための制度を中心に検討を加える。

2.株式制度と種類株式
株式の種類とその意義、株式分割・併合のもつ意味と意義、株主名簿の意義、単位株制度の意義を整理し、立法上の問題をも検討する。

3キャッシュ・アウト
株式併合、全部取得条項付種類株式、特別支配株主による売渡請求、合併等の企業再編に伴うキャッシュ・アウトを取り上げ、その意義と問題点を検討する。


4.株主総会の意義と決議事項
株主総会の権限事項、決算、基準日、取締役会決議、招集通知、書面投票制度、提案権、質問権、議長権限、議決権の代理行使、(上場会社における)有価証券報告書の提出等について、総会招集・決議に関する手続を時系列に整理する。

5.議決権代理行使、提案権行使、質問権・説明義務と議長権限
議決権代理行使の代理人を株主に限定することの意義と問題点を、判例を中心に、検討する。株主の提案権行使の意義と問題点を取り上げる。同時に、参考書類のディスクロージャーとしての意義を検討する。つぎに、質問権と説明義務の範囲に関わる問題を取り上げ、説明義務と株主の知る権利との関係を検討する。

6.少数株主権の行使
業務の執行に関する検査役の選任、会計帳簿の閲覧請求等に関する少数株主権行使に関する最近の事例問題を検討する。

7〜8.第三者割当て増資と支配権の希釈化
新株発行および自己株式の処分にかかわる法規制を整理し、とくに第三者割当に関する裁判例(差止め請求無効の訴え等)を検討する。

9.新株予約権の発行と敵対的買収規制
ライブドア対ニッポン放送事件(東京地決平成17年3月11日、同平成17年3月16日(異議申立)、東京高決平成17年3月23日(保全抗告))をとりあげる。同時に、企業価値報告書―公正な企業社会のルール形成に向けた提案」平成17年5月27日(企業価値研究会)を検討する。つぎに、ブルドックソース事件(東京地決平成18年6月28日、東京高決同年7月9日、最高裁決定同年8月7日)を検討する。

10.MBOにかかわる紛争
MBOの問題点をサンスター事件(大阪高等裁判所平成21年9月1日決定)等を通して検討する。
公開買付の意義と実態についても同時に取り上げる。

11.〜12.事業再編と少数株主・債権者保護
事業譲渡、会社分割、合併、株式交換、株式移転にかかわる制度の意義と少数株主・債権者保護に関する問題点を検討する。

13.コーポレイト・ガバナンス
役員・会計監査人の職務と権限、社外取締役の監督機能と委員会(監査等委員会・指名委員会等)設置会社、独立役員の意義と問題点を検討する。

14.〜15.役員・会計監査人の責任とその責任追及手段、事前救済(差止請求・役員等の解任・解職)と事後救済を検討する。同時に、代表訴訟・多重代表訴訟も検討する。

【予習・復習】

演習に沿った比較的詳しい資料を事前に提供するので、関係する条文(主として会社法)をも参照しつつその資料を読むことで、一定程度の知識の習得と理解が求められる。復習では演習での議論を踏まえて重要な制度や論点について理解を深めることが求められる。

【授業関連科目】

会社法、民法

【成績評価方法・注意】

(1)予習の程度、(2)質問に対する応答の内容、(3)レポートの内容、(4)出席状況を総合的に評価する。なお、基本的で重要な制度や問題については、理解度を確認し、かつ理解を深めるために、その部分に関して的確に文章化できているかをチェックする。

【教科書】

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【参考書】

著者:新山雄三等編著 書名:会社法講義 出版社:日本評論社