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法哲学II 2単位 2014年度以後入学生
2年以上 経済   経営    
2013年度以前入学生
青井 秀夫 前期1コマ 2年以上 経済   経営    
備考  
実務経験 内容 過去10年間、関西中央法律事務所において大阪弁護士会所属弁護士として勤務し、一般民事、民間企業の知的財産権侵害、刑事分野の国選弁護、高齢者支援・障害者支援といった仕事にも範囲を広げて、実務活動に従事してきた。その過程で、研究教育と実務活動は交互に相補的に行うことが、どちらの分野にとっても、最も生産的であることを強く自覚するようになった。今後も、それら両分野の有機的連携を目指していきたいと考えている。
授業との関連 元来法哲学は経験の叡知の結晶であるにもかかわらず、ともすれば経験から離れた内容空虚な抽象論に堕落する危険がある。この講義では、教官自身の実務経験からの刺激をふんだんに盛り込むことにより、退屈で生気の褪せた法理論から脱却できるよう努力したい。
シラバス1

【授業の目的】

 法理論・法律学方法論の学説史を回顧する。(イ)法律に忠実な解釈、(ロ)法律を超えた法発見である欠缺補充、(ハ)法律に反する法発見とよばれる裁判官による法律訂正 ー (イ)〜(ハ)のどの問題についても、正しい法発見の方法如何という論点をめぐって、学派の間で熾烈な論争が繰り広げられ、理論成果が蓄積されてきた。講義では、学説発展の経緯や歴史的背景を振り返り、現代理論の到達地点に立って、理論展開のあるべき方向を検討する。

【到達目標】

 学生諸君が卒業後いかなる進路に進んでも、法的なものの考え方を会得しているか・否かで、大きな差が生じてくる。そうした法的なものの考え方を培い、磨きあげるためには、現在の法学や学説がいかなる経緯を経て発展してきたものであるか、またそれがいかなる課題や限界を内含しているかについての正確な理解を有していることが、必要不可欠である。そうした法的学説の歴史的展開についてアウトライン的な知識を獲得してもらうことが、本講義の到達目標である。

【授業計画】

1. 第1章 序論 ― 法学(法理論)の学説史の基本視点
2. 第2章 法律の解釈、法律の欠缺補充および法律の訂正
3. 第3章 法実証主義と反法実証主義
4. 第4章 歴史法学とローマ法継受
5. 第5章 概念法学 ― その1・パンデクテン法学
6. 第6章 概念法学 ― その2・概念法学の完成
7. 第7章 自由法学 ― その1・潮流と主張者
8. 第8章 自由法学 ― その2・主張内容と限界
9. 第9章 利益法学 ― その1・潮流と主張者、出発点
10. 第10章 利益法学 ― その2・変容と限界
11. 第11章 ナチ法学 ― その1・ナチズムと主張者、その法現実
12. 第12章 ナチ法学 ― その2・法実証主義であるか?
13. 第13章 ラートブルフと戦後の再出発
14. 第14章 日本の法思想・法意識と西洋のそれとの対比
15. 第15章 総 括

(注)指定する教科書は出版社の在庫が目下ゼロの状態ですが、出版社の格別の好意により、この講義の聴講者に限り、購入することができるようになりました。購入希望者は、必ず教科書販売の期間中に申込み、丸善書店から購入してください。教科書販売の期間を過ぎた後は、入手することが不可能になります。この点については、掲示板も併せてご参照ください。

【予習・復習】

受講にあたっては、毎回予習2時間、復習2時間程度学習するよう、努力してください。
具体的には次の点に留意してください。第1回の予習としては、法理論の学説史という視座について予習し、事後には問題点につき復習すること。第2回では、学説史の争点である法律解釈、欠缺補充、法律訂正といった裁判官操作について、予習するとともに、重要争点につき復習すること。第3回では、法実証主義という重要な学説について、予習と復習をすること。第4回では、歴史法学とその任務について、予習復習すること。第5回では、パンデクテン法学というユニークな学説が生まれるに至った背景と経緯を予習復習すること。第6回では、概念法学の完成版の思考法について予習復習すること。第7回では、自由法学の潮流と主張者について概要を把握できるよう、予習復習してください。第8回では、自由法学の主張内容と限界点について、十分理解できるよう、予習復習してください。第9回では、利益法学の潮流と主張者と出発点について、予習復習すること。第10回では、利益法学の主張がなぜどのように変容したか、またその限界はどこにあるかについて理解するよう、予習復習してください。第11回では、ナチ法学の基本主張と主張者について、また当時の法的現実について重要点を理解できるよう、予習復習してください。第12回では、ナチ法学は果たして法実証主義であるかという争点について、論評できるよう予習復習してください。第13回では、ラートブルフがどのような主張によって、戦後ドイツの法哲学の出発点をうち立てたのかについて、予習復習してください。第14回では、西洋の法思想と日本の法思想を比較する際の基本視点について行き届いた理解ができるよう、予習復習してください。第15回では、以上のすべての考察を総括し、一体法思想の流れから何を学ぶことができるかについて、自分の考えが持てるよう、予習復習してください。

【授業関連科目】

憲法、行政法、民法、刑法、法制史、比較法、法社会学

【成績評価方法・注意】

普段の学習状況、確認テスト、最終の筆記試験の成績などを総合的に評価する。出席重視。
とりわけ出席を重視する(3回以上無断欠席の場合、単位不可の方針ゆえ、この点にご注意ください)。

【教科書】

著者:青井 秀夫 書名:法理学概説 出版社:有斐閣

【参考書】

著者:青井秀夫 書名:近代ドイツにおける法理論の展開、法学論叢第22号 (2014) 出版社:岡山商科大学学会