【授業の目的】

テーマ：　「現代国家の制定法、慣習法、裁判官法や権利はいかなる性質を有しており、法秩序のなかでどのような相互関係に立っているか、とりわけ制定法の効力はいかなるものであるか」
　法秩序の基本的な構成要素である制定法、慣習法、裁判官法、権利を取り上げ、夫々の性質およびそれらの相互関係に関する基本的な学説の対立を把握するとともに、妥当な見解を習得する。

【到達目標】

　われわれが日常生活において具体的な法的紛争に巻き込まれたときは、民法、刑法、訴訟法などの個別実定法を解釈したり、事実認定のあり方を検討する作業が不可欠となる。しかし、そうした解釈や法適用の作業は、制定法や慣習法、判例法、権利などが織りなす法秩序の基本構造について的確な基礎理解を有していることを不可欠の前提としている。そうした基礎理解を踏まえない解釈理論であれば、一時しのぎの屁理屈に成り下がる可能性があり、そのままでは事案の妥当な解決は望めない。
　リーガルマインドの骨格となる基礎知識を獲得するためには、法の内外に視野を広げて、法なき空間の問題、法と道徳、法と権力といった、より広い領域を見渡し、法の隣接領域と法それ自体とが微妙に交錯する有り様を視野に収めることが、非常に有益である。こうした幅と厚みのある考察を通して、「法の賢慮」に磨きをかけるための基本視角を身につけてもらいたいというのが、本講義の狙いである。

【授業計画】

1.　第１章　法哲学はいかなる学問か
2.　第２章　法と法なき空間
3.　第３章　法の有限界説と法の無限界説
4.　第４章　国家内在的法観と国家超越的法観
5.　第５章　制定法の法的性質 ― その1
6.　第６章　制定法の法的性質 ― その2
7.　第７章　制定法の効力 ― その1
8.　第８章　制定法の効力 ― その2
9.　第９章　慣習法 ― その1
10.　第１０章　慣習法 ― その2
11.　第１１章　裁判官法 ― その1
12.　第１２章　裁判官法 ― その2
13.　第１３章　権利 ― その1
14.　第１４章　権利 ― その2
15.　第１５章　法とは何か ― 総括と展望

　(教科書についての注意) 指定する教科書は出版社の在庫が目下ゼロの状態ですが、出版社の特別の好意により、この講義の聴講者に限り購入することができるようになりました。購入希望者は、必ず教科書販売の期間中に申込み、丸善書店から購入してください。教科書販売の期間を過ぎた後は、入手することが不可能になるのでご注意ください。これに関する掲示板も併せて参照されたい。

【予習・復習】

受講にあたっては、毎回予習2時間、復習2時間程度学習するよう、努力してください。
具体的には次の点に留意してください。
第１回の予習としては、法哲学という科目の学問的位置づけについて予習し、事後にはその点につき復習すること。第２回では、どういった局面でなぜ法の真空状態が出現するかにつき、予習するとともに、重要点につき復習すること。第３回では、法を無限界であるとする見解について、予習と復習をすること。第４回では、法を国家と連結させて捉える見解とそうではない見解の対比について、予習復習すること。第５回では、法の性質について4つの見解があることを予習復習すること。第６回では、命令説と評価規範説の対比ポイントについて予習復習すること。第７回では、制定法の効力についての3つの見解について整理しながら把握できるよう、予習復習してください。第８回では、制定法の効力について、具体例を挙げながら、各見解の長短が理解できるよう、予習復習してください。第９回では、慣習法の効力根拠についての3つの見解があることについて、予習復習すること。第１０回では、3つの学説の長短と2面結合説について概要を理解するよう、予習復習してください。第１１回では、判例法の法的性質と法的効力について、理論状況を理解できるよう、予習復習してください。第１２回では、先例の法的効力について、もっとも妥当な見解を構築できるよう、予習復習してください。第１３回では、権利の種別と権利の概念史について、予習復習してください。第１４回では、権利と客観法との緊張関係について理解できるよう、予習復習してください。第１５回では、以上のすべての考察を踏まえて、一体法とは何かという点について、自分の考えが持てるよう、予習復習してください。

【授業関連科目】

憲法、行政法、民法、刑法、訴訟法などの実定法科目全般、法思想史、法社会学

【成績評価方法・注意】

普段の学習状況、確認テスト、最終の筆記試験の成績などを総合的に評価する。
とりわけ出席を重視する（３回以上無断欠席の場合、単位不可の方針です）。

【教科書】

著者：青井秀夫　書名：法理学概説　出版社：有斐閣

【参考書】

適宜指示する