シラバス1

【授業の目的】

医療は患者ひいては社会に恩恵をもたらすものであると同時に、さまざまな倫理的、法的、社会的問題Ethical, Legal and Social issues(=ELSI)をも、抱えている。本講義のねらいは、受講生がそれらの問題のうちのとくに基本的なものを理解するようになることである。

【到達目標】

受講生は本講義を通して知識を身につけると同時に、「ものの考え方」を身につける。本講義を通して受講生の目から数枚の鱗（うろこ）が落ちることを期待する。

【授業計画】

第１回 【テーマ】 臓器移植をめぐる法と倫理 【内容】 改正臓器移植法による自己決定権空洞化の問題を含めて、臓器移植一般に関する法的、倫理的問題を概説する。
第２回 【テーマ】 脳死をめぐる法と倫理 【内容】 脳死は人の死か、という根本問題も含めて、脳死に関する法的、倫理的問題を概説する。
第３回 【テーマ】 安楽死・尊厳死をめぐる法と倫理 【内容】 安楽死・尊厳死に関する実例を紹介した上で、それらに関する法的、倫理的問題を概説する。もちろん、日本の判例や外国の立法等も概説する。
第４回 【テーマ】 死生論 【内容】 死の法的意味の概説を含めて、死生論（死の意味、死生観、死に方、死への準備教育など）について概説する。死ぬ権利・義務や死の自己決定権の問題、広く、命は誰のものか、自殺は許されるか（自殺企図（希死）患者は救命されるべきか）、などという問題についても概説する。
第５回【テーマ】 生殖医療をめぐる法と倫理 【内容】 人工授精・体外受精、配偶子（精子・卵子）提供、出生前診断・着床前診断、代理出産、死後生殖・死後認知等における法的、倫理的問題を概説する。
第６回 【テーマ】 患者の自己決定権とインフォームド・コンセント 【内容】 生命倫理の基本概念である患者の自己決定権について概説する。また、インフォームド・コンセント及び医療者の説明義務についても概説する。
第７回 【テーマ】 医療事故をめぐる法と倫理 【内容】 診断・検査ミス、投薬・注射・手術事故、及び輸血・麻酔事故等に関する法的、倫理的問題を概説する。
第８回 【テーマ】 薬害をめぐる法と倫理 【内容】 これまでの日本の薬害事件を紹介し、それらに関する法的、倫理的問題を概説する。
第９回【テーマ】 医療ビジネスをめぐる法と倫理 【内容】医療はどこまでビジネスなのか、という根本問題を含めて、医療ビジネスの法的、倫理的問題を概説する。
第10回 【テーマ】 プライバシーと個人情報 【内容】 診療情報の保護・開示・利用、診療記録の改ざん等に関する法的、倫理的問題を含めて、広くプライバシーと個人情報に関する法的、倫理的問題を概説する。
第11回 【テーマ】 医学研究をめぐる法と倫理 【内容】 近時の医学研究不正問題を紹介しつつ、人体実験や臨床試験も含めて、医学研究一般に関する法的、倫理的問題を概説する。
第12回 【テーマ】 優生学をめぐる法と倫理 【内容】 ハンセン病問題などを素材にしつつ、優生学ないし優生思想をめぐる法的、倫理的問題について概説する（当然、我が国の国民優生法・優生保護法・母体保護法などにも触れる）。エンハンスメント論についても言及する。
第13回 【テーマ】 人体資源化・商品化をめぐる法と倫理 【内容】 アメリカ人体部品産業の紹介を含めて、人体資源化・商品化の現実を紹介する。その上で、それらに関する法的、倫理的問題を概説する。
第14回 【テーマ】 人体論 【内容】 生体・死体、臓器・組織・細胞等に関する所有権問題を含めて、それらをめぐる法的、倫理的問題を概説する（死者と死体の法の概説を含む）。
第15回 【テーマ】 人間の尊厳と人権 【内容】 医療や医学研究の規制概念となっている人間の尊厳と人権の法的、倫理的概念について、その歴史的役割の問題も含めて、概説する。

【予習・復習】

予習に２時間かけることが望ましい。全員が教科書等を用いて事前に学習する。復習に１時間かけることが望ましい。

【授業関連科目】

法学特殊講義（粟屋）、刑法、民法、憲法

【成績評価方法・注意】

試験なし。毎回の小テスト及び受講態度等から総合的に評価する。遅刻、早退、私語、スマホ等は大幅な減点対象となる。逆に、こちらからの質問に対する積極的な応答は大幅な加点となる。

【教科書】

著者：粟屋剛ほか　書名：生命倫理学/医療と法 講義スライドノート　出版社：ふくろう出版

【参考書】

適宜指示する
著者：粟屋剛ほか　書名：シリーズ生命倫理学・全２０巻　出版社：丸善

シラバス2

【授業形態】

【授業方法】

【受講生のPC等使用】

【初年次教育】

【接続科目】

【評価(方法)手段】