【授業の目的】
本講義は、法学部の専門科目として、本学の教育目標である「専門技術の振興」に貢献し、豊かな知識に裏付けられた鋭い洞察力を身につけてもらうことを、授業目標とします。
【到達目標】
授業終了時に、ローマ法から近代ヨーロッパ法への法制度の歴史的展開に関する以下のテーマについて、受講生が正確な知識に基づいて、その基本的な事柄を説明することができるようになることが、到達目標です。 (1) 類型強制から契約の自由への歴史的展開 (2) 消費貸借契約の歴史的展開 (3) 莫大な損害の歴史的展開 (4) 目的不到達の不当利得の歴史的展開 (5) 売買契約における危険負担の歴史的展開
【授業計画】
授業形態:講義 授業方法:受動型 授業は、配付する資料(プリント)を用いて、以下の内容で行います。2回目以降からは該当箇所を事前に読んでおいて下さい。 (1) 第1テーマ:売買と交換を巡るローマの法学者間の議論 その1:交換は売買か? 二つの学派間での論争について考察します。 (2) その2:論争の持つ意味と近代法における「契約の自由」 ローマ契約法における「類型強制」の原則から近代法の原則について説明します。 (3) 第2テーマ:なぜ消費貸借契約は要物契約だったか、また要物契約でなければならないのか その1:ローマ法における消費貸借契約 ローマ法における消費貸借の意義と法的構成について考察します。 (4) その2:近代ヨーロッパ民法典の立場 中世以降の議論と近代民法典の条文について概観します。 (5) その3:諾成消費貸借契約 要物契約から諾成契約への展開と両者の構造の相違について考察します。 (6) 第3テーマ:莫大な損害の歴史的展開 その1:ローマ古典期の立場とキケロの見解 「売買契約においてはお互いだまし合うことが許されている」について説明します。 (7) その2:莫大な損害 この理論の出発点であるテオドシウス帝の勅法を解説します。 (8) その3:その後の展開 中世の神学者、その後の法学者の議論について概観します。 (9) その4:現代の「莫大な損害」 ヨーロッパ各国の民法典、民法学に生き続ける「莫大な損害」について説明します。 (10)第4テーマ:目的不到達の不当利得の展開 その1:目的不到達の不当利得 ローマ法におけるこの類型の意義について考察します。 (11)その2:近代民法典における目的不到達の不当利得 ヨーロッパの各国民法典の条文、学説について概観します。 (12)その3:日本における目的不到達の不当利得 日本の民法学においてこの類型がどのように説明されているかについて検討します。 (13)第5テーマ:危険負担の歴史的展開 その1:「危険は買い主にあり」 ローマ売買法における危険負担の問題について解説します。 (14)その2:所有権の移転と危険負担 近代民法典に規定されている該当条文を概観します。 (15)最後のまとめとしての「ローマ法と比較法」 これまでに学んできた各テーマを振り返りながら、現代におけるローマ法の意義について考察することにします。 予習(1時間程度)資料の該当箇所をよく読んで、問題点を整理し、よく分からないところはどこかをチェックしておいて下さい。 復習(2時間程度)配付資料に基づき、講義での説明を整理し、理解しておくこと。各テーマごとにレポートを作成してもらいますので、毎回、その準備をしておくこと。
【授業関連科目】
大陸法とその歴史I
【成績評価方法・注意】
授業計画に掲げた五つのテーマごとに、その内容と自身の見解をまとめてレポートを提出してもらい、提出されたレポートの評価をもって成績評価を行う(成績評価はレポートのみ)。
【教科書】
プリントを配布する
【参考書】
参考書を使用しない
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